特別企画 タイトル トクベツキカク

地獄少女・地獄少女二籠はコチラ

DVDシリーズ発売開始記念 わたなべ監督インタビュー

原案者から監督となった今、どんな想いを持って制作を進めているのか、アフレコ終了後のスタジオで、
あまり触れられることのない部分も遠慮なく突っ込んだ、ロングインタビューです。
聞き手:阿部 愛(プロデューサー) 


阿部(以下A)/ わたなべ(以下W)
A「閻魔あいを三鼎でどう描くか、のプランニングはどうでしたか?」
W「確かに続編という位置なんですが、新しい作品という位置付けというか…どちらも成立するようにできたらいいなあ、と考えてました」
A 「こちらとして…あいを蘇らせてくださいとか、変身させてくださいとか、プロデュース側として提示したリクエストがあって、それを設定として消化するというのもかなり難しかったと思うんですが、どうでしょう」
W 「少女にのりうつるとか、善悪とか二つのものが同じ殻にこもって、その一方が殻を突き破っていくという提示は非常に面白いと思ったし、それが今回の地獄少女に上手く結びついたらいいなと思いました。表現としては地獄少女の世界に近いものが出来ていると思うんですが」
A「旧シリーズと、あえて変えようと思った事は?」
W「二籠までの作品が完成しているので、それまでのパターンに乗っかりつつ、それを生かし使いながらも、続編ではないものを作れたらと思ってました」
A「もっと具体的にいうと」
W「例えば、一番悩んだのが地獄流しのシーンです。あいが二籠の続きの感情でやるというのは成立しないですよね。だからその辺はもうパターン化というか割りきりというか。言葉は悪いけど目を瞑って、そういう風に置くしかない」
A「地獄流しが一切できないと、物語の面白さが失われてしまいますもんね」
W「実際、映像にすると余計難しかったですね。でも、それを割り切っていく。シナリオライターの方が一回りするまではバラエティ的に動かして、それが段々一つの物語にまとまっていくという流れ…各話が一つの方向性に偏っていない感じは、地獄少女の各話完結のスタイルの中ではいいのかなと思ってますけどね」
A「放送当初から大森さん(1期、2期の監督)も一つのコンセプトにしていた「復讐バラエティ」という要素ですかね」
W「そうですね。初期の気持ちで新たにスタートしたという感じです」
A「ドラマの語り口としては相変わらず、ちょっと話を意図的に飛ばしてしまって、そこは少し考えていてくださいというスタイルですね」
W「うまく言えないけど、感情が…二籠までの感情が段階的に入っていけばいいなと思います。ライターの方も前シリーズから参加してますし、見ていますからね。二籠の続きの気持ちで書くと、楽しんでみてもらえるというのとは、ちょっと合わなくなってしまうので、最初のうちはそこは離してもらって」
A「二籠は大きな流れとして、シリアスにぐっとなだれ込んでいったので、今回やるにあたり揺り戻したいという気持ちはありましたね。ただ、あいの感情をリアルに追うと、それはできなくなりますね」
W「あいの感情については今後描かれるかもしれないし、三鼎以外で描かれる可能性もあるかもしれないですね。」

*          *         *

W「なんというか、1本目2本目3本目って、現実で繋がっているのかいないのか、パラレル的な部分がありますね。
特に今回はリアル現代というよりも少し変わった世界、という風に作っていて。事件がすべてそこで起きると言う事で、ファンタジー感が強まっていると思うし。新しい感覚で見てもらえればと思っているんですが」
A「今回の地獄少女はどちらかを肯定して描いてなくて、そういうところが楽しんでもらっている反面、こっちが何を言いたいのかわからないという風に取られる事もあると思うんです」
W「最初の地獄少女は悪者を成敗する感じが強かったんで、その目線で見ると違和感があるかもしれないですね。どちらかというと三鼎は不条理な心情というか、そいういったものを中心にドラマを描いているので、その温度差は発生するかもしれない」
A「善悪、裁くような気持ちで見るとバランスが悪いかもしれないですね。今回は学校、町とかの小さい世界を舞台に、感情的に追い詰められた人の物語ですよね。俯瞰で見ると大した事はないんだけど、それが本人にとっては重大事態であるという、そこから生まれるドラマ」
W「でも完全にリアルに描くというのではなく、その精神的な部分を大げさに描いて結果、地獄流しが行われる。その心理のドラマを描いているということですね」

A「今日11話のアフレコが終わりました。完パケは6話。前作までは原案者でしたが、監督として実際作ってみて感じたことはありますか?」
W「番組を見ている人たちはこちらの想像以上に物語をリアルな出来事として感じているんだなと思うことがありますね。あとは1期2期って、やっぱりすごくレベルが高くて。翻って考えるに、ファンタジーに逃げている部分が自分には多いのかなという気がします。ただ僕が1期2期を作っていたら、この3期みたいになっていたと思うんです。
企画の段階でイメージされていたものから考えると、1期2期は大森監督のカラーが非常に強く出たかなという感じがしますね。ドライな感じ。それがいいという人たちは今回違和感を感じちゃうのかなと。意識してやっているわけではないですが、ウェットな感じになってしまっている…自分には何かが足りないんだろうな、社会性かな」
A「……ドラマの設定が期を経るごとに増えてきて、身動きの取りづらさも感じますね」
W「1期のラストは過去話。日本の土着的な話で、テーマへ近づくという形になっているので非常に綺麗に終われている。二籠は多少作るときに苦労したけど最後が受け入れられれば成立する。でも三鼎は全体的なドラマが組み立てづらくて…」
A「考えていると、物語の陣地がかなり塗りつぶされているのに気が付く」
W「次のシリーズの事を考えずに、常にその時考えられる最大のネタを出していますからね。残りの陣地がどんどん少なくなって、3に至っては飛び出すしかなかったという感があります」
A「今に至る経緯がありすぎて、設定や心情の錘をかなり持っていますからね」
W「二籠までが「原作」になっちゃったかな。だから三鼎が原作から逸脱しているように見えるんだろうなという気がします。どれも一つの企画から生み出されたものなんですけど、なんだか1期2期が原作になってしまいました」
A「脚本家さんは初めての人もいますけど、1からずっと書いてもらっている方が多いですよね。みなさん一話作るごとにどんどんドラマ作りが深化してきています。初期は枚数が埋まらなくて、エピソードを足したりすることもありましたよね」
W「本読みで意見を出し合って」
A「でも今回は、コンテに入りきらない、どこ削ろうかと。ところが一箇所削ると合わなくなる。緻密に物語が組まれていて」
W「内容も重いですよね」
A「ですね」
W「糸を解く動機が不条理な分、軽く流しているように見えるかもしれないけれども、裏にあるものが非常に強く重い。地獄初期には動機を表に描いていたんだけど、話数を重ねるにつれ……」
A「そうですね。さて、今回は大人でもなく子供でもない、中学生という存在をドラマの中心に置いてみたんですが、この辺はいかがですか」
W「手ごたえを感じている半面、大人から見た中学生像なのかなという反省点もありますね」
A「……」
W「大人になって振り返ってみると、こういう事だったのかな、と思うけれども」
A「リアルな中学生くらいが見ると、こんな事しないって思うというような……?」
W「そういう感覚になるかもしれないですね。実際に意見を聞いたことがないから想像なんだけど」
A「そうですか……」
W「好きな子に振られて、全てがいやになるとか、悲しい気持ちが永遠に続くような苦しみを感じたり……時が経って、自分が大人になるなんて想像できなかったですよね。その頃は若いから闇雲に前進する力ばかり強くて、解決するとかそういう事はしてなかったかもしれないですが。今振り返るからわかることなのかもしれない」

A「今後こういうものを、こういう風に描こうという予定はどうでしょう」
W「シナリオは全部できてるんで、あとはアフレコが進むにつれて、キャラクターがシナリオ段階で考えていた方向性と、自然に出てきたキャラクターの方向性の摺り合せが今後の課題ですね」
A「キャラクターが話数を重ねて勝手に歩き出しましたよね」
W「特にゆずきはシナリオで描いていたよりも優しい、おとなしい感じですね。声を聞いたときに設定を優先せず直感で決めたので、それにシナリオで描いたキャラクターを合わせていきます」
A「心優しいゆずき、戻ってきたあい……この世界を今後どういう風に描いていきますか」
W「今回あえて異世界ファンタジーというか、少し世界をずらした場所に地獄少女を置いてあるのは、今後……あるかわからないけど……地獄少女が描かれるときに、時間をとばして二籠の直後の三期との間が描けたり、時間軸を自由に持っていけるような事も見据えつつ作っているので、生かしていければと思います。僕らが子供の頃に読んでいた「エコエコアザラク」みたいに神出鬼没の学園ものや、なかよしの最初のマンガの世界が実は当初に考えていた地獄少女に近くて。学園もので学校が舞台で…三鼎はそれを一つの町の中に閉じ込めたという形ですね。これがいいか悪いかはさておき、一つの形、少女漫画的というか」
A「1、2は少女漫画的でないというか。ロジカルさがありますね」
W「3はリアルさが…3は欠けてますね」
A「ええ!否定ですか!」
W「……今後は一期で作ったパターンは踏襲しつつ、あいの独り遊びとか、1期でわりと大事にしていた和のテイスト、あとあいの孤独感とかをもう少し出していけたらいいなと思ってます」
A「あいのシーン…増えてくると雰囲気が違ってきますよね」
W「そうですね。でもあいが戻ってくれば」
A「そうですね。戻ってくるといいですね」

W「あと今回は実験として、バンクを使ってのパターンを繰り返す美しさ、期待してきた時に出てくる映像とその楽しさというものを意識して作っています。もう古いのかもしれないけどね。僕が見ていたアニメは決まったところに決まった画が出ていて、でも「また同じかよ」とは思わなくて」
A「キター!みたいな感じですよね」
W「その辺を意識していますね」
A「キター!と思いながらも、そんな事ないだろ!と突っ込みつつ見る」
W「そんな事ないだろ!と突っ込みつつ、そういう感覚に陥るのはなんで?という所を考えるのも今回のドラマの楽しみ方ですかね。シナリオには書かれていないけど描かれているんですよ。4話のアフレコの後で、輪入道の菅生さんが、「この物語は深いね」って言ってくださって。この間にどんな気持ちの動きがあったのかを類推すると、深いって。言われて嬉しかったですね。」
A「きっと見ている人からは、いろいろな意見が出ていると思いますよ」
W「見ている人からどう捉えられているかは全然予測できないですね。大事な言葉、でもささいな言葉を聞き逃したり、大事なカットの作画が悪かったりするだけで感想が全く変わってしまうということもあると思います」
A「今回は先ほども言いましたが、シナリオの密度が高く、それをこの尺に押し込むと表情一発!とかこのカットで表現!とかがあり難しいですね」
W「喜怒哀楽とは違う感情を、表情として絵で出す」
A「高潔とはいえない感情を」
W「あとは個人的には前半、あいをもっと増やしたかったですね。尺的に入んないけど」
A「物語の仕組み的にも、入んないですよ」
W「もっと設定ベースで入れられれば……」
A「1期は全然入ってませんし、ここはもうスパッと割り切りましょう。依頼者とターゲットのドラマが中心なんですから」
W「各話はあいの物語ではないですね」
A「でも全体としてはあいの物語なんですよね」
W「ええ。ゆずきのでもありますが。最後まで見ないと物語、テーマは見えてこない」
A「そうですね。それが地獄少女ですね」
W「……」

A「なんかボソボソと暗い感じのトークになっているような。地獄はいつも暗い終わりですが、インタビューは明るくがんばるぞ!ってな感じの終わりにしたいと思ってるんですけど」
W「暗くなってきましたかね。……えっと、今回の三鼎は新しい地獄少女っていう感覚で」
A「作っていると」
W「そうです。で、1と2には囚われない。あと今、ずっと続くことを前提に言ってますけど」
A「ずっと続けることを前提に聞いています」
W「うん。この3が大きく世界を広げるチャンスだと。監督が代わったということもあり。……ただ4期は大森さんにやってもらって」
A「またなんでそんなこと言うんですか」
W「ちょっと路線をもとに戻したりして」
A「あっ!インタビューが50分越えてますよ。最後に何か一言」
W「最終回のコンテが見たいです」
A「言われる前に自分が言いましたね」


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